教育3法案の概要 (2007.2.22)


 


地教行法の改正の方向について

 

 教育基本法改正、中央教育審議会答申及び教育再生会議の第一次報告などを踏まえ、地方教育行政体制の充実等を図るために、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を次のように改めることとしてはどうか。

 

1.教育委員会の責任体制の明確化

○ 地方教育行政は、国との役割分担・協力の下、地域の実情に応じて、公正・適切に行わなければならないこと。

○ 地域の基本的な教育方針・計画の策定や教育長の事務執行状況の評価など合議制の教育委員会で決定する必要がある事項を明確化すること。

 

2.教育委員会の体制強化

○ 教育委員会は、第三者の知見を活用しつつ、教育委員会の事務の点検・評価を行い、議会に報告すること。

○ 市町村は、組合、広域連合、機関の共同設置などにより、広域で教育行政事務を処理することに努めること。

○ 市町村教育委員会に指導主事を設置しなければならないこととすること。

○ 教育委員の責務を明らかにするとともに、文部科学大臣・都道府県教育委員会は、教育委員の資質向上に努めること。

 

3.教育における地方分権の推進

○ 教育委員の数については、5人を原則としつつ、都道府県・市の教育委員会は6人以上、町村の教育委員会は3人以上とすることができるようにすること。また、保護者が必ず含まれるようにすること。

○ 教育委員会の所掌事務のうち、文化(文化財保護を除く)、スポーツ(学校における体育を除く)に関する事務は、地方公共団体の判断により、首長が担当できるようにすること。

○ 首長の私立学校に関する事務のうち、学校教育に関する専門的な指導・助言・援助については、私立学校の特性にかんがみ、その自主性を尊重しつつ、首長の求めに応じ、教育委員会ができるようにすること。

○ 県費負担教職員の人事に関し、一定の人事に関する権限を市町村教育(※)委員会に移譲すること。※ 分限、懲戒、採用、昇任、転任等

○ 都道府県教育委員会は、県費負担教職員の人事に当たり、市町村教育委員会の内申を尊重するものとすること。

○ 市町村教育委員会は、内申に当たり、校長の意見を尊重するものとすること。

 

4.教育における国の責任の果たし方

○ 文部科学大臣・都道府県教育委員会は、地方自治の原則を尊重しつつ、都道府県教育委員会・市町村教育委員会の事務が法令違反や著しく不適正な場合に限り、全国的な教育水準の確保や教育事務の適切な実施のため、是正の勧告や指示ができるようにすること。

○ 教育委員会や学校等の教育機関は、文部科学大臣・都道府県教育委員会が行う調査に協力するものとすること。

○ 文部科学大臣は都道府県教育委員会の教育長の任命について、都道府県教育委員会は市町村教育委員会の教育長の任命について、一定の関与を行うこと。

 

5.その他

 

教育職員免許法等の改正の方向について

 

 教育基本法改正、中央教育審議会答申及び教育再生会議第一次報告などを踏まえ、優秀な教員を確保し、資質を向上させる仕組みを導入するために、以下の事項について教育職員免許法等を改めること。

 

1.教員免許更新制の導入 (教育職員免許法改正)

(1) 効力

○ 普通免許状及び特別免許状に10年間の有効期間を定めること。

(2) 有効期間の更新

○ 有効期間は、現職教員等(教員や教員となる見込みがある者など)からの申出により更新することができること。

○ 免許管理者は、免許状更新講習を修了した者又は勤務実績その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものとして認めた者でなければ、免許状の有効期間の更新をしてはならないこと。

○ 有効期間の更新がなされなかった免許状は、その効力を失うこと。

○ 災害その他やむを得ない事由があると認められる場合には、有効期間を延長することができること。

(3) 現に免許状を有する者への対応

○ 現に免許状を有している者については、同様の講習の修了確認を受けなければならないこととすること。

(4) その他

○ 指導が不適切であると認定された者の免許状の効力等について必要な措置を講ずること。

※その他省令等において定める予定の事項

○免許状更新講習は、大学等が開設

○講習を受講する時期は、有効期間が満了する直近2年程度の間

○免許状更新講習の講習時間は、30時間程度  等

 

2.指導力不足教員の人事管理の厳格化 (教育公務員特例法改正)

(1) 指導が不適切な教員の認定及び研修の実施

○ 任命権者は、教育や医学の専門家や保護者などの第三者からなる判定委員会の意見を聴いて「指導が不適切な教員」の認定を行うこと。

○ 任命権者は、指導が不適切と認定した教員に対し、一定期間、研修を実施しなければならないこと。

○ 研修の期間は、過度に長期にならないよう実施期間を政令で規定すること。

(2) 研修終了時の認定及び措置

○ 任命権者は、研修終了時に指導の改善の状況について認定を行うこと。

○ 任命権者は、研修終了時の認定において、指導が不適切であると認定した者に対して、免職その他必要な措置を講ずるものとすること。

 

3.免許状の失効 (教育職員免許法改正)

○ 教員が、必要な適格性を欠く場合などの理由により分限免職処分を受けたときは、その免許状は効力を失うこと。

 

学校教育法の改正の方向について

 

 教育基本法改正、中央教育審議会答申及び教育再生会議第一次報告などを踏まえ、学校種の目的・目標の見直しや学校の責任体制の充実等を図るために、学校教育法の規定を次のとおり改めることにしてはどうか。

 

1.学校種の目的及び目標の見直し

(1) 義務教育の目標に関する事項

○ 教育基本法に義務教育に関する目的が規定(第5条第2項)されたことを踏まえ、義務教育の目標に関する規定を新設してはどうか。

○ 義務教育の目標については、教育基本法に教育の目標に関する規定(第2条)が置かれたことを踏まえ、現行の学校教育法に規定する小・中学校の目標規定(第18条及び第36条)を改め、例えば、

・自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画する態度(第18条第1号、第36条第3号)

・生命及び自然を尊重する精神、環境の保全に寄与する態度(新規・教育基本法第2条第4号)

・我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解及び国際協調の精神(第18条第2号)

・家族や家庭の役割、生活に必要な基礎的な理解と技能(第18条第3号)

・国語の正しい理解と使用する基礎的な能力(第18条第4号)

・数量的な関係の理解と処理する基礎的な能力(第18条第5号)

・自然現象の科学的な観察と処理する基礎的な能力(第18条第6号)

・健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣、心身の調和的発達(第18条第7号)

・音楽、美術等についての理解と技能(第18条第8号)

・職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んじる態度、進路選択する能力(第36条第2号)

などを養うといった趣旨を規定してはどうか。

(2) 幼稚園に関する事項

○ 教育基本法に教育の目標(第2条)及び幼児期の教育(第11条)に関する規定が置かれたこと等を踏まえ、以下のとおり現行学校教育法の幼稚園の目的及び目標に関する規定(第77条及び第78条)等を改めてはどうか。

○ 幼稚園の目的については、例えば、義務教育以後の教育の基礎が培われ、生涯にわたる人格形成の基礎が培われるよう、幼児期の特性に配慮しつつ、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長するといった趣旨を規定してはどうか。

 また、目的の見直しに伴い、発達や学びの連続性が明確となるよう、学校種の規定順を変更してはどうか。

○ 幼稚園の目標については、現行規定(第78条)に、幼児を取り巻く環境の変化や教育基本法に示された教育の目標、義務教育の目標の内容も踏まえつつ、例えば、

・健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣、身体諸機能の調和的発達(第78条第1号)

・集団生活の経験、すべての社会生活の基盤となる人への信頼感、自主、自律及び協同の精神や規範意識の芽生え(第78条第2号)

・身近な社会生活や自然に対する理解と態度の芽生え(第78条第3号)

・自ら進んで言葉を使い、相手の言葉を理解しようとする態度(第78条第4号)

・多様な創作的表現に親しむこと、豊かな感性と表現力の芽生え(第78条第5号)

などを養うといった趣旨を規定してはどうか。

○ 幼稚園が、家庭・地域における幼児期の教育を支援するよう規定してはどうか。また、幼稚園が実施するいわゆる「預かり保育」の位置付けを明確にしてはどうか。

(3) 小学校に関する事項

○ 義務教育の目標規定を置くこと等を踏まえ、以下のとおり現行学校教育法の小学校の目的及び目標に関する規定(第17条及び第18条)を改めてはどうか。

○ 小学校の目的については、例えば、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すといった趣旨を規定してはどうか。

○ 小学校の目標については、例えば、その目的を実現するために、義務教育の目標を基礎的な程度において達成するよう努めなければならないといった趣旨を規定してはどうか。

(4)中学校に関する事項

○ 義務教育の目標規定を置くこと等を踏まえ、以下のとおり現行学校教育法の中学校の目的及び目標に関する規定(第35条及び第36条)を改めてはどうか。

○ 中学校の目的については、例えば、小学校教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すといった趣旨を規定してはどうか。

○ 中学校の目標については、例えば、その目的を実現するために、義務教育の目標の達成に努めなければならないといった趣旨を規定してはどうか。

(5)高等学校に関する事項

○ 教育基本法に教育の目標の規定(第2条)が置かれたこと及び小・中学校の目標規定の改正等を踏まえ、以下のとおり現行学校教育法の高等学校の目的及び目標に関する規定(第41条及び第42条)を改めてはどうか。

○ 高等学校の目的については、例えば、中学校教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すといった趣旨を規定してはどうか。

○ 高等学校の目標については、現行規定(第42条)をもとに、例えば、

・中学校教育の成果の発展拡充、豊かな人間性と創造性、国家及び社会の形成者として必要な資質(第42条第1号)

・将来の進路の決定、一般的な教養、専門的な知識、技術及び技能(第42条第2号)

・個性の確立、社会についての広く深い理解、健全な批判力、社会の発展に寄与する態度(第42条第3号)

などを養うといった趣旨を規定してはどうか。

※ 中等教育学校についても同様の改正が必要。

 

2.義務教育の年限について

○ 義務教育の年限に関する規定が教育基本法から削除されたことを踏まえ、義務教育の年限は現行制度どおり9年とすることを前提に、その趣旨を学校教育法に規定してはどうか。

 

3.学校の評価等に関する事項

○ 学校評価等を推進する観点から、以下のような規定を学校教育法に新設してはどうか。

○ 例えば、学校は、当該学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図ることにより、その教育水準の向上に努めなければならないといった趣旨を規定してはどうか。

○ 例えば、学校は、当該学校の教育活動その他の学校運営の状況に関し、保護者、地域住民その他の関係者に対して情報を提供するものとするといった趣旨を規定してはどうか。

 

4.副校長その他の新しい職の設置に関する事項

○ 学校教育法において、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に、副校長、主幹及び指導教諭を置くことができることとし、それぞれの職務として、例えば次のような趣旨を規定してはどうか。

・副校長: 校長を補佐し、校務を整理するとともに、校長から任された校務について自らの権限で処理すること。

・主幹: 校長、副校長及び教頭を補佐するとともに、校長から任された校務について、校長等が判断・処理できるよう、とりまとめ整理すること。あわせて、児童生徒等の教育を担当すること。

・指導教諭: 他の教諭等に対して、教育指導に関する指導・助言を行うとともに、児童生徒等の教育を担当すること。