0090格差社会の是正

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○西村(智)委員 それでは、格差の方に移っていきたいと思うんですけれども、時間がなくなってきました。
 読売新聞社の教育に関する全国世論調査、これは何人もの方が取り上げていらっしゃることですけれども、親の経済力の差によって子供の学力格差も広がっていると感じている人が七五%に上っております。実際に、いろいろな調査がありまして、保護者の経済力や地域の経済水準と子供の学力というのは相関するという結果が出てきております。結果として、これは学校や地域の選別競争がそろそろ始まっているのではないか、これは教育機会の制度的な差別化につながっているのではないかというふうに思うんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

○小坂国務大臣 読売新聞の五月二十八日付の記事がございますが、「学力の差 「親の所得が影響」七五%」、このような表現も使われておりまして、委員が参照されました読売新聞の教育に関する全国世論調査によりますと、国民の意識として、家庭の経済力によって子供の学力格差が広がっているとの認識があることは承知をいたしております。
 家庭や地域の経済力にかかわらず、すべての児童生徒が確かな学力をはぐくむことは学校教育の責任であるという認識を持っておるわけでございますが、このために、義務教育費の国庫負担制度によりまして、地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国のすべての地域においてすぐれた教職員を一定数確保することができるようにしているとともに、習熟度別あるいは少人数指導あるいは補充的な、発展的な指導など、個に応じた指導の充実に努めております。
 また、学習意欲の向上、教員の指導力の向上なども含めまして、確かな学力の向上のための総合的な施策、学力向上アクションプランを推進いたしているところでございます。家庭や地域の経済状況などにかかわらずに、すべての児童生徒に対して確かな学力がしっかり身につくように、今後とも努めてまいりたいと考えております。

○西村(智)委員 現実には、この格差競争といいますか、教育機会をめぐる競争というのはかなり激しくなってきているというふうに思うんです。
 大臣は、一定の相関が出てきているということをお認めになった上で、その上で文科省として適切な対応をとるべく努めているというふうに答弁されたんだと思いますけれども、ただ、現実はそれを上回る勢いで私は進んでいっているのではないかと思います。
 既に言われていることですけれども、学力の低い学校はよい学校ではないですとか、あるいは経済力と学力が相関にあるという図式がこれからさらに固定化していくおそれがあるのではないかということを私は懸念していますし、また一方で、学習塾に通う子供がどんどん低年齢化している、あるいは、いい学校のある地域にマンションが次々と建っているというような報告もありますね。
 チャレンジしたいんだけれども、もうスタートの時点でチャレンジする機会すらなくなってきている、こういう層が生まれてくる。一方で、もう生まれたときからいい学校に近いマンションに住んでいる子供もいるわけでして、大臣、これで果たしてよろしいんでしょうか。大臣はどんなふうにお考えですか。

○小坂国務大臣 今も答弁させていただきましたように、委員が御指摘のように、経済的な格差がすなわち機会を喪失するようなことにつながるということはやはり避けるべきだと思っております。
 初等中等教育段階においては、すべての子供に基礎、基本をしっかりと身につけさせて、それを基盤として、子供一人一人の個性を伸ばすことが重要だと考えております。こういう中で、小学校に通う児童の中に、学習塾に通う、そして補習的な、補充的な授業を得たり、あるいは少し先の予習をしたりということで学力を伸ばす努力をしている。ところが、経済的な事情によって学習塾に通うことすらできない、こういうことが生じることは、私としても避けなければならないという認識を持っております。
 そういう意味で、子供の居場所づくりという形で、今日、共稼ぎ世帯が多くなっている中で、家へ帰っても両親がいないというような状況の一人っ子の政策のために、それを補充するために学校で残ることができるような、そういう居場所をつくるという事業も進めているわけでございます。ここに、退職教員の皆さんに御協力をいただいてボランティアとして来ていただいて、学びの居場所という、仮称でございますが、こういった施策も十九年度から導入をしてまいりたいということで、現在、十九年度予算に反映すべく企画もいたしているところでございます。
 このような認識に立って、そういった状況を解消するような努力は私もこれからもしてまいりたいと存じますが、基礎、基本を十分に理解している子供に対する発展的な学習を含めた習熟度別の指導、こういったものを通じて、基礎的な学力はしっかりと身につけさせる中で、また、その中で学習意欲のある子供に対してはしっかりとその学習が伸びるような支援も行ってまいりたいと存じます。

○西村(智)委員 先ほど大臣、格差が広がってきているという御認識をお示しいただきました。
 安倍官房長官、時間がない中でお残りをいただきまして済みません。
 安倍官房長官は、今、日本の社会の中には格差はないという御認識でしょうか、伺います。

○安倍国務大臣 格差がない社会はあり得ない、このように考えております。もし問題があるとすると、格差が広がっているかどうかということではないかと思います。
 格差の広がりについては、政府としては格差が拡大をしているというふうには認識はしていないわけでありますが、しかし、ニート、フリーターの増加等から見れば、将来の格差の拡大については懸念があるわけであります。また、地域間において格差を感じている人たちがいるとすれば、そういう人たちに対して勇気を与えていくことも政治としては大きな使命ではないか、私はこのように思うわけであります。
 格差というのは常に存在するわけでありまして、頑張った人とそうでない人に差ができるのは、これはみんな人間は当然だと思っている。しかし、その格差が許容できる範囲かどうか、あるいはまた、その格差はフェアな競争の結果かどうか。フェアでない、公正でない結果であれば、それは当然問題である、このように認識をしております。

○西村(智)委員 先ほど小坂大臣は、教育の中で格差があるとおっしゃったと思うんですけれども、大臣は、広がってくるとすれば問題だという御答弁でした。
 再チャレンジ推進計画、それではどういう御認識でつくられたのか。これを見ますと、私の読み方ですけれども、つまずいた人に対して再チャレンジする機会を与えるということなんですけれども、そうしますと、例えば全国でフリーター、もう二百万人ほどいられるというふうに聞いておりますし、あるいは派遣の人たちの対象プログラムもあるわけですけれども、合わせますと四百万人ぐらい。そうすると、日本全国、あちこち、つまずいた人たちがごろごろと転がっているということになるわけですね。
 私は、ここはやはり政府は格差があるということをまず認めて、そういった認識でこの再チャレンジ推進計画、改めて大臣の、まあ先ほど、格差が教育の中ではあるということも示されました。新卒者の対象プログラムがこの再チャレンジ推進会議の中では示されておりません。ただ一つありましたのは、新卒の学卒者で就職氷河期にあった人たちだけが対象だということなんですね。就職氷河期なんですね。
 そういたしますと、スタートラインではみんなすべて同じラインに立っているという前提なんだと思うんですけれども、実際には、もう既に始まるところから格差は生じてきている。学習機会の格差、保護者や家庭や地域の経済力、経済水準の格差、これがみんな連動しているというふうに考えますと、そこのところは認識を改めていただきたいと思いますけれども、もし大臣、官房長官、何かあれば、伺います。

○安倍国務大臣 格差がない社会はないということについては御理解をいただいたのではないか、このように思います。
 私が今進めております再チャレンジにつきましては、私ども小泉内閣が進めている改革というのは、頑張った人や汗を流した人や知恵を出した人が報われる社会をつくっていく。それは公正、フェアな競争の結果でなければならない。その活力が経済を押し上げ、そして日本の国力を高めていく。しかし、その結果、負け組、勝ち組として固定化させたり、あるいはそれが階級化してはならない。だれにでも、何回も挑戦できる、チャレンジできる社会をつくっていきたいという中において、暮らし方や学び方やあるいは働き方において複線化をしていくことが必要ではないだろうか。そして、再チャレンジに挑んでいる人たちを支援していく、個別にしっかりと政策を組んでいこうということであります。
 先ほど就職氷河期の御指摘がありましたが、新卒の方だけではなくて、いわば年齢制限等々をなるべく外して、特にニート、フリーターとなった方々は就職氷河期の方々に偏っているというところもありますから、そういう人たちに新卒者と同じように会社に就職できるチャンスはないだろうか、まず公務員から始めようということにおいて、公務員第3種においてその枠をつくっていくということにもなったわけでございます。
 これは、広く多様な生き方を許容できる社会にしていくという発想の転換をするために考え方を変える。と同時に、そういう方々にしっかりと支援をしていきたい。就職についても、そういう政策もしっかりと盛り込んでおりますので、よく見ていただきたい、このように思います。

○小坂国務大臣 委員の御質問が、学力格差から就職の、ニート、フリーターの問題にまで広がっているわけでございますが、まず、学力格差の点で、先ほど申し上げた背景を一つ申し上げておかなければいけないと思います。
 保護者の学歴や職業、いわゆる経済力によって子供に学力の格差が生じるかということについて、保護者の学歴や職業が子供の得点に与える影響というものをOECDが調査をいたしております。このOECDのPISA二〇〇三年の調査によりますと、ヨーロッパ諸国、またOECDの平均では二〇・三でございますけれども、日本は一一・六ポイントという形で、OECD平均から見ますと、そういった影響は日本は少ない国だと見られているということも一つ参考にさせていただき、また、学力の格差については、先ほど申し上げたような習熟度別の指導等によりまして、その格差の縮小に努めているということでございまして、拡大をさせないという努力をしているということを申し上げたことを御理解いただきたいと思います。