0260子どもの意見表明権の政府案における位置

 

 

164国会 衆特別委 第3回(524日)

○池坊委員 それでは、先ほどからも質問に出ておりました豊かな情操と道徳についてお伺いしたいと思います。…総理、人間としての基本、豊かな心、情操をはぐくむということについて、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 まず、情操をはぐくむ一番大事なことは、愛し、愛されることだと思うんです。親が子供を愛す、これが本来人間の持っている、動物の持っている基本だと思います。
 動物の世界でも、子供を育てるためには、親はみずからの危険を覚悟して敵からかばって子供を育てます。その親から愛情を受けていないと、普通、子供は動物の世界では死んでしまいます。最近の、野生でない動物を人間が育てて、卵を産んだとする、子供を産んだとする、しかし、自分が親からのそういう育て方を知らない野生の動物は、その子供の育て方も知らないから、結局人間が手を加えないと死んでしまうという面を見ても、まず最初に世の中に出てきた子供に対して親が十分な愛情を持って育てる、これが私は基本だと思っております。愛されることを知れば、必ず人を愛すようになる。愛されることを知らない、いじめられてばかりの育て方をすると、他人に会っても、また自分はいじめられるんじゃないかと思ってしまう。
 でありますから、私は、法律以前に最も大事なことは、まず親がしっかりと子供を愛す、認める、受けとめる。そして子供も、口で親から言われなくても、周りの方、家族の人たちからしっかりと、ああ、自分は愛されているんだな、受けとめられているんだな、認められているんだなという認識を持たれるような環境をつくるということが大人の責任ではないかと思っています。それが今若干欠けてきているのではないかなと。
 そういう点については法律では律し切れない面も多々あると思いますが、私は、情操教育の基本は、まず親がしっかりと子供を愛すること、子供も、ああ、自分たちは周りの人たちから愛されているんだという気持ちを持つこと、これがあらゆる情操教育の基本だと思っております。

○池坊委員 総理の教育論を最後に伺おうと思ったら、きちんと言っていただきました。
 時間が参りました。この全面改正に当たり、何のために、だれのために教育はあるのかという本源的な教育のあり方、そして、教育は、人間が人間らしく生きるために、真の幸福の追求のためにあるのだと、経済や政治の発展のため、そしてイデオロギーの影響を受けたりすることなく、真摯に議論されますことを願い、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

 

164国会 衆特別委 第3回(524日)

○保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 小泉総理に伺います。
 私たち社民党は、教育基本法は、かつての戦争を痛苦に反省して、憲法の理念実現のためにつくられたもの、今、性急に変えるべきものではないと思っておりますが、ただ、政府法案の中で、六十年ぶりの大改正、こういうふうにうたわれている。
 学校教育の主人公はだれなのか。私は、子供自身であるというふうに思います。
 一九九四年に我が国も子どもの権利条約を批准していますけれども、例えば十二条には意見表明権、十三条には表現の自由などありまして、子供は権利主体だ、こういう考え方を強く打ち出し、また、我が国政府もこれを実現していく義務を負っているわけですが、今回、この教育基本法案には、こういった子供が権利主体であるという考え方が、余りというか、権利や人権という言葉はありませんから、子供は教育を受ける客体として従順に教育を受けるという考え方が色濃い、こう思いますが、この点について、総理、どうお考えですか。

○小泉内閣総理大臣 それは誤解ですよ。教育というのは子供の持てるさまざまな力を引き出していく、これが教育でありますから、そういう精神を法にあらわそうと。条文を読みましょうか、いいでしょう。これが教育で、何も強制的に一つの考え方を押しつけるというものではありません。

○保坂(展)委員 もちろん、教育の中で強制的に考えをたたき込むものではないとおっしゃったので、例えば教育の中で子供が自分の意見をちゃんと言う、例えば先生の言うことについても自分の意見はある、こういうことは当然保障されるわけですよね。総理、どうですか。

○小泉内閣総理大臣 それは、子供だって、生まれて間もなく言葉もしゃべれないんですから、言えといったって何も言えない。それを、言葉を教えるというのがまず教育でしょう。
 学校に入って、家庭教育で教えを受けている子供もいるけれども、一定の年齢に達したら学校に入って、すべての子供たちが文字を読むことができる、言葉を話すことができる、足し算、引き算ぐらいはできる、いわゆる読み書きそろばんぐらいはできるようにして、将来、ああ、自分はこういう仕事につきたいな、こういう人になりたいな、こういうところに行きたいなと思える、そういう基礎的な能力を子供に持ってもらおうというのが義務教育として極めて大事な点だと私は思っております。

 

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○保坂(展)委員 一番大事なのは、その通達、通知の中身だと思いますが、きょうは麻生大臣にも来ていただいて権利条約の話を集中的に聞いたので、担当大臣である小坂大臣からも伺いたいと思うんです。
 例えば、子どもの権利条約、児童の権利条約の十二条には意見表明権、子供は、自分の見解をまとめる、それ相応の年齢に応じてですけれども、自己の意見を表明する権利があるんだ。あるいは十三条には表現、情報の自由。そして十四条には思想、良心、宗教の自由。これらが今回の教育基本法に、精神は合致しているんだと総理からも答弁をいただきましたけれども、例えば、時間がないので、十二条の意見表明権、子供が自分の意見を、発達、成長の段階に応じて、しかしなるべくそういう機会をつくっていく。こういう部分は、今回の法案にどこか表記されているんでしょうか、十二条。

○小坂国務大臣 御指摘の条約の十二条、意見表明権、これについて、対応する教育基本法案の条文は何だ、こういう御質問でございますけれども、私どもは、児童の権利条約の第十二条の意見表明権や第十三条の表現の自由、あるいは十四条の思想、良心、宗教の自由等については、それぞれもう既に憲法の、思想、良心の自由あるいは表現の自由、信教の自由等で保障されていることでございます。ですから、今回の教育基本法の基本理念を定める際に、一々といいますか、各条に権利条約を引いて規定する必要はないと考えておりまして、特に規定はいたしておりません。

○保坂(展)委員 先ほど麻生大臣が、何で権利条約と教育基本法なんだ、どういう関係なんだというふうに大分御不満のようでしたから、私、申し上げれば、やはり、この六十年間いろいろあったといういろいろの中に、世界的な子供観の変化というのがあったと思うんですね。
 六十年前は、子供が意見を表明する、そんなことは概念として余りなかった。そして、子供に意見を表明する権利があるんだよということに気づくだけで、まだまだ世界じゅうにも、国連の議論も、そこに至るまでにいろいろな変遷があったと聞いています。
 ですから、子供が子供の意見を表明していいんだ、そして、特に子供にかかわる環境、つまり教育環境、学校ということに、みずから子供がかかわる環境については特に意見を言うプロセスは保障しようじゃないかという合意が、国際社会、この子どもの権利条約の中でつくられてきたわけです。ですから、子ども国会も開かれていますよね。
 そういう機会は大分ふえてきたと思うんですが、大臣に伺いたいのは、教育基本法案の中で、この五年間の中で、子供の意見を、一般的に例えば大臣が小学校に行って子供と話した、そういうことではなくて、教育基本法というのをつくるんだ、君たち、どう考えるのかということをやってきたのかどうかということについてはいかがですか。

○小坂国務大臣 この五年間ということをおっしゃっていただきましたけれども、先ほど来、他の委員のときに答弁申し上げたように、この間、タウンミーティングあるいはシンポジウムという形で教育の改革についての意見を、一般の皆さんからの意見も聴取をしてきたところでございます。
 また、今、そういうことではなくてとおっしゃった、まさに私どもが学校現場に行って、そして聞くということも、スクールミーティングという形で、前中山文部大臣そして私、それぞれ、副大臣また大臣政務官も含めますと、三百八十校の皆さん、学生、児童、そしてまたPTAの皆さん、また教員の皆さんとも、じかにお話し合いを進めてきたわけでございます。
 委員が御指摘のように、今回の教育基本法改正に当たって、教育基本法を改正するけれども、君たちどのような意見を持っているか、このような形では聞いてはおりません。しかしながら、今日の教育について、皆さんはどういうふうに今日の学校の中で教育を考えていますか、それはもっと簡単な言葉で申し上げると、今、学校の中で何かみんな不安があるかな、不満はあるかな、もっとこうしてほしいことはあるかな、このような聞き方で聞いておりました。そういった意見も踏まえた上で今回の改正の法案に対応しているところでございます。

 

164国会 衆特別委 第8回(62日)

○高井委員 …それで、教育の権利の主体としての子供からの意見というのも大事なことでございまして、基本法に反映させることが大事だと思っておりまして、意見徴収の状況等、先般も小坂大臣も当委員会でお述べになられていましたが、国民周知、国民の皆さんに周知しているということでございますが、いわゆる子供の側からの意見徴収等の状況はどうなのか。そして、回数や時間等の御説明は何度かございましたけれども、意見徴収の人数は、どれぐらい広くとられているのか。

○田中政府参考人 子供の意見の反映についてのお尋ねでございますけれども、文部科学省におきましては、平成十二年十二月に教育改革国民会議から報告を受けまして教育基本法の改正について提言をいただいて以来、また中央教育審議会の答申等につきまして、さまざまな手段を通じまして、国民的な議論や理解を深めつつ、教育基本法の改正についての取り組みを進めてきたところでございます。
 例えば、教育改革タウンミーティングでは、年齢制限は設けずに行いまして、実際に高校生から率直な質問がなされるような場面もございました。
 また、平成十七年一月から七月までの間は、教育現場を知り、国民の生の声を伺うという趣旨で、スクールミーティングと題しまして、大臣、副大臣あるいは文部科学省の職員が、小学校、中学校、高等学校、これは三百八十校を訪問いたしまして、教職員や児童生徒あるいは保護者と率直な対話を行ってきたところでございます。
 さらに、文部科学省のホームページにおきましても、一般の方々から広く御意見、御質問を受け付けておるところでございまして、この中でも子供さん等からも御意見や御質問等をいただいておるところでございます。
 特にスクールミーティング等におきましては、教育基本法の改正をメーンにしておるものではございませんので、具体的には、学校五日制になって土曜日をどう過ごしているとか、少人数指導をどういうふうに感じているとか、あるいは総合的な学習の時間についてどんな感想を持っているとか、もっと身近な内容をお聞きするのが中心であったわけでございます。
 それから、文部省のホームページ等によりまして、全国の国民の方々から御意見をいただいておるところでございますけれども、これは、平成十八年の五月十一日現在で、十四万八千件余り御意見をいただいておるような状況にあるわけでございます。
 ただ、こういうことで、私どもといたしましては、ふだんから児童生徒を含めた国民の方々との対話を進める中で、今後、教育のあり方に反映させていきたいというふうに考えておるところでございます。
 したがいまして、今回の教育基本法の改正案をつくります際にも、特定の子供さんの意見を直接反映したというものではございませんけれども、文部省では、こういう国民の方々から聞いたいろいろな問題意識を持ちながら、中教審の答申や与党協議会の最終報告などを踏まえまして、教育基本法の案をつくりまして国会に御提出したところでございます。