0510能力の意義

 

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○斉藤(鉄)委員 次に、第二号でございます。
 この第二号の最初に出てくる「個人の価値を尊重して、」ということにつきましては、先ほど池坊委員からも質問がありましたし、今回議論されております。
 その次の、「その能力を伸ばし、」という文章がございます。
 実は、この教育基本法政府案の中に能力という言葉が全体で四回出てまいります。第四条、教育の機会均等のところで、「ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会」、こういう使われ方。それから、同じくその第三項で「能力があるにもかかわらず、経済的理由」云々という奨学金の項目。それから、五条の義務教育のところで「各個人の有する能力を伸ばしつつ」ということで出てまいりますが、それぞれ意味合いが少しずつ違うような気がいたします。
 この能力という言葉をもってして、能力主義、能力別教育、果てはエリート教育、競争主義をあおるものだ、こういう批判もございますけれども、今回のこの第二号に出てくる能力ということの意味、そして四条、五条での能力ということの意味、これについてきちっと定義をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○田中政府参考人 法案の能力についての御質問でございますが、ここに言う能力とは、それぞれの個々人、教育を受ける者それぞれが備えるあらゆる能力を総称するものでございます。
 まず、第二条第二号の、個人の価値を尊重して能力を伸ばしとございますが、これは、教育によりまして個人のあらゆる能力を伸ばすに当たりまして、それぞれの個性や独自性に着目して行われるべき旨を定めているものでございます。まさにそれぞれの個人が持っている能力をできる限り、そしてまた調和的に伸ばしていこうということでございます。
 また、第四条一項は、憲法の規定を受けまして、すべての国民がその能力に応じた教育を受ける機会を与えられるべきことを定めておるわけでございますが、これはすべての国民に教育を受ける者の能力に応じた適切な教育を受ける機会を与えるという趣旨でございます。
 第四条三項では、教育を受けるだけの能力があるにもかかわらず、経済的理由で修学が困難な者に対しまして、奨学の措置を講ずる義務を国や地方公共団体に課しているところでございますが、この場合の能力も、特に優秀で高い能力を指すことではございませんで、それぞれがそれぞれの学校において教育を受けるに必要な能力を有しているということを指しておるところでございます。
 さらに、第五条第二項の各個人の有する能力を伸ばしつつ、この能力につきましても、教育を受ける者が持つあらゆる能力を発展させることを義務教育の目的として明示しておるものでございまして、いずれの条文の能力もいわゆる能力主義や競争主義の教育を目指すという趣旨ではございません。