0580愛国的態度を規定することの理由、効果

 

 

164国会 衆特別委 第3回(524日)

○藤村委員 民主党の藤村修でございます。松本剛明委員の関連質問という形で、ほぼ三十分ぐらいしかございませんが、質問をさせていただきます。
 まず、私は、きょうは政府案にのみ質問をさせていただきます。
 愛国心論争がたけなわというか、始まったということであろうと思います。私、まず聞きたいのは、愛国心については、もう御承知のとおりではありますが、既に学習指導要領においてもきちんと書き込まれております。今、これは一番新しい学習指導要領、御存じのとおりでありますが、これは小学校の学習指導要領ですが、ここの例えば第六学年、社会の目標(一)に、「国を愛する心情を育てるようにする。」と書いてあります。あるいは小学校の五、六年の道徳でありますが、「郷土や国を愛する心をもつ。」と書いてあります。
 つまり、教育の分野ではもう既に、これは当然のこととして学習指導要領の中で取り組まれているわけで、私も当然、この国を愛する心を、日本に生まれ育ち、学び、そんな中で自然な結果として持つことは当たり前の話で、ただ、そうした心が決して上から強制されて身につくものではないし、一方的に上から押しつけがあってはならない、このことは考えております。
 既に学習指導要領において書いてあるのに、今回改めて全部改正の中の「教育の目標」の中に記述したというのは、どんな意味と効果と、さらに、では今後、学習指導要領をこれでまたさらに書きかえるのかということと、あるいは評価をするようになるのかということについて、これは文科大臣の方からお答え願いたいと思います。

○小坂国務大臣 御指摘の学習指導要領におきましては、例えば小中学校を通じて、我が国の国土や歴史への理解を深めまして、愛する心と国家の発展に寄与しようとする態度とを一体として育成することとしているわけでございます。
 今回、教育基本法におきましても、新しい時代を切り開く教育を実現する観点から、特に重要な事柄であります我が国と郷土を愛する態度について規定することといたしまして、各学校において改正の趣旨を踏まえた指導の一層の充実を期することとしたものであります。

○藤村委員 今のことで、評価のことをちょっと飛ばされたかと思います。これは、今回基本法に書き込んだことで、学習指導要領においてさらに書き加えられたりし、さらにそれが何か評価につながるということはないのかということでありますが。

○小坂国務大臣 具体的な指導はどのように行うかといいますと、先ほども一部、他の委員の質問で申し上げたわけでございますけれども、我が国の歴史の中で我が国に貢献してきた偉人や地域に貢献した人々について学んだり、地理について勉強をしたり、世界の中における日本の位置づけ、あるいは世界で活躍する日本人等について学ぶことによりまして、そういった事柄を通じてこの目的を達成していこうということでございますから、この具体的な方法については、基本的には学習指導要領において、今日の学習指導要領と大幅に変更するものではございませんけれども、しかしながら、本法律の成立に伴いましてもう一度各種学習指導要領を精査いたしまして、必要な改正があればそれをやっていこう、こういうことになるわけでございまして、この部分につきましては、教育の推進基本計画の中でまたこれを規定して、そのように学習指導要領も対応していく、このようになると思うわけでございます。

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○横光委員 …そこで、まずお尋ねしますが、国を愛する態度、あるいは国を愛する心、あるいは国に愛着を持っている、そういった意味の思いが国民の皆様方には十分であるのか、あるいは足りないと思っているのか、あるいはそういった思いが低下し続けていると思っているのか。小坂大臣、そして安倍官房長官、それから猪口大臣、お三方に、今の国民の皆様方は愛国心に含まれるようなものは十分であるかどうか、足りないのかどうか、そのあたりをちょっと御見解をお聞かせください。

○小坂国務大臣 日本が、国際化社会の中で、国際社会に出ていって問われた場合に、日本という国をしっかりと説明できる人が今どれほどいるだろうかということは、よくいろいろな場で議論がされます。私は、そういったときに、やはり、アイデンティティーということが言われますが、日本人がしっかりとしたアイデンティティーを持って国際社会で活躍をするためには、日本の伝統や文化、あるいは地理とか、あるいは地域の伝統、文化についてもしっかりとした認識を持っていることが必要だと思います。そういった点において、今日の若い人たちのそういった知識、また、そういったものの知識によって培われる心情というものは、以前の我々の若いころに比べて少し低下しているのではないかなという感覚を持つことは多いわけでございます。
 そういったことから、また、昔では起こらなかったような事件が起こってまいります。伝統の偉人の像を傷つけたり、あるいは日本の文化を象徴するような宝物を毀損したり、そういったことを見ますと、やはり、日本人がそういった日本の伝統、文化に対して持っていた思いが今日必ずしも伝わっていない部分がある、このようにも考えるわけでございまして、そういった意味をすべて含めて愛国心という言葉で表現されるとするならば、その愛国心という部分も少しずつ薄まってきたという感覚を持っております。

○安倍国務大臣 我が国の郷土の歴史や文化や伝統について理解を深め、尊重し、そしてそれをはぐくんできた我が国や郷土を愛する態度を養っていくことは、国家、社会の形成者として必要なものである、そしてまた、ただいま小坂大臣が答弁したように、国際社会を生きていく上においても極めて重要である、そういう人物こそ真の国際人ではないかというふうに私も思うわけでございます。そのために、本法案におきまして、我が国と郷土を愛する態度を養うことを規定したわけでございます。
 ちなみに、本年五月の内閣府政府広報室発表の社会意識に関する世論調査によれば、今後国民の間に国を愛するという気持ちをもっと育てる必要があると思うかについて、そう思うと答えた人が全体の約八割、八〇・四%でありますが、八割を占めておりまして、本法案の改正は国民の要望にこたえるものであるというふうに思っております。

○猪口国務大臣 今官房長官からお答えされたとおりだと思いますが、私は、日本国民には一般的に、国を愛する、そういう気持ちはあると思います。だからこそ、我が国は、そもそも戦後多くの困難を抱えながらここまで来たのだと思います。我が国は、無資源国であり、戦後の社会において敗戦からの再出発というまことに多くの苦難を乗り越えてきた。それができたのは、この国を愛する気持ちを私の親の世代、そして先輩の世代が持っていたからにほかならないと私は思うんですね。我が国は、世界第二位の規模の経済、そしてG8サミットの参加国、これも最初の六カ国の中に入っているわけですね。それだけの国を築けたのは、やはりこの国への愛があったからではないですか。
 だけれども、今心配なのは、そのような状態を続けることができるのかどうか。次の世代、そして子々孫々に、この国を愛する気持ちを持って、もし我々がそうでなければだれがこの国を愛して発展させてくれるのかということを伝えていかなければならないと思います。

○横光委員 よくわかりました。まさにそのとおりだと思います。
 NHKの放送文化研究所というのが三十年にわたってそういった調査をされておる本があるんですね、三十年にわたって。これは、国の方でそういった調査をしているところはありますか。私は、NHK、いろいろ不祥事が出て問題になっておりますが、ちゃんといいことやっているなと思う。
 今お渡ししている資料の三をごらんになっていただきたいんですが、猪口さんがおっしゃられたとおり、まさに三十年間にわたって私たちの国の国民は国に対しての愛着心は高いんですよ。変わっていないんですよ。七三年から変わっていない。「日本に生まれてよかった」と思う人がずっと九〇%。おっしゃるとおりなんです。しかし、その愛国心というものは、この二番目も「古い寺や民家に対する親しみ」、これはまさに伝統文化でございますし、まさにこの愛着心、日本の国に対する思いというのはみんな高いものを持っておるんですね。
 ただ、それが、いろいろな形によって、心ということで、今非常に問題になっているのは、これが、押しつけ、強制、あるいは評価、処分、こういうことになってはいけないという状況なんですね。自然にみんな、法律に何もないにもかかわらず、これだけ高い人が愛国心を持っておる。それはオリンピックや、あるいはワールドカップや、さらにベースボールのクラシックベースボール、このあたりの日本の人たちの喜び方、あれはまさに愛国心の一つのあらわれでしょう。

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○糸川委員 …次に、今回の法案で新たに掲げられた目標の一つであります、日本の伝統ですとか文化の尊重、郷土や国を愛する態度、こういうことについてお伺いをしたいんですが、現在、世界有数の経済大国と言われている我が国は、その豊かさを背景に多大な国際貢献をするに至っております。これは、戦後、国民の努力によって我が国が目覚ましい経済発展を遂げたからだ、こういうふうに私は思いますが、この経済成長を支えたのは実際には人であって、その人づくりを担った戦後の教育というものが我が国の社会に大きな価値をもたらした、こういうふうにも思っております。
 グローバル化が進展しまして、外国が身近な存在となる現代社会におきましては、国際社会、こういうものとのかかわりの中で必要となる能力の育成に人づくりの重点を置くべきである、こういうふうに考えております。これからの国際化の時代を生き抜く日本人というものは、みずからのアイデンティティーの基礎となる伝統ですとか文化を尊重して、郷土や国を愛する心、あえて心と申させていただきますが、心を持つことが重要であり、このような資質を身につけた国民が国際社会へ参画していくことこそが我が国の未来の道を開くことにつながるんではないかなというふうに考えております。
 そこで、今回の法案におきまして、まさに今この時代に、なぜ、日本の伝統ですとか文化の尊重、それから郷土や国を愛する態度を規定されたのか、ここについて文部科学大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

○小坂国務大臣 …今回の改正案の中で、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、そして世界の平和と発展に寄与する態度を養うというふうにしたのは、これはもうまさに、今、糸川委員がおっしゃられたとおり、いわゆるグローバル化と言われる社会の中にあって、日本人が海外に出て活躍をする、そのときに、日本人のアイデンティティーとして、しっかりとした歴史観、そして伝統に対する認識、日本の伝統文化というものをしっかりその知識を身につけていただくことが、やはり日本を理解され、また日本人が尊敬されるもとだと思うわけでございます。
 そういった意味からも、今委員がまさに御指摘になったとおりでございまして、グローバル化が進展する中の国際社会を生き抜いていく上で、我が国の伝統と文化についての理解を深め、そして尊重し、それらをはぐくんできた我が国や郷土を愛する日本人の育成が求められているという認識に立って、また同時に、国際社会の一員として、他の国を尊重し、そして国際社会で活躍できる、世界に貢献できるたくましい日本人を目指してもらう、こういう気持ちを込めて、この第二条五項に規定をしたものでございます。