0840政府案における義務教育年限削除の意味

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○保坂(展)委員 小坂文部大臣に伺います。
 先ほどの議論にもありましたが、今回、九年という年数が削除されておりますが、これまでの議論を聞いていると、義務教育期間の延長ということで、例えば、幼児教育であるとか、あるいは高等教育の部分であるとか、その延長という文脈で議論がされているというふうに感じますけれども、九年をとったということから論理的に考えますと、逆に短縮、九年より短くするということも可能になってくるんじゃないか。ここはどういうふうに考えたらいいのか。これは、九年以上というような書き方もあったかと思うのですが、お答えいただけないでしょうか。

○小坂国務大臣 今回の法案において年限を明示していないということは、義務教育の年限を規定しないで、将来における延長の可能性も視野に入れつつ、その手続が柔軟に行えるようにしたこと、また、学校教育法にゆだねることによって、現行のこの九年につきましてもいろいろな意見が出てきております。したがって、制定時に義務教育の年限を六年から九年に延長するということが喫緊かつ重要な課題であったことから、現行法であえて義務教育の年限を九年と明示した、このように解しておりまして、一方で、その後の社会的な変化を踏まえて、義務教育に求められる内容も変化しておるわけですから、その年限の延長も検討課題の一つとして指摘をされてきておるわけであります。
 委員の御指摘のように、それでは短縮も可能になるのではないか、こういうことでございますけれども、現在の議論の中におきましては、小中一貫教育あるいは中高一貫教育、こういった形の中で、高等学校にはもう既に九割以上の方々が進学をされている、あるいは、幼児教育もほとんどの幼児が保育園あるいは幼稚園に通うような時代になってきた、こういった社会の情勢に柔軟に対応できるように義務教育年限を学校教育法にゆだねることとしたわけでありまして、決して短縮を意図すべく削除したものではないということを御理解いただきたいと思います。

 

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○臼井委員 …現教育基本法の第四条、義務教育年限につきまして九年という言葉が消えております。「九年の普通教育を受けさせる義務」という記述が消えているわけでございます。現在、幼児教育の無料化、無償化というのが大変話題になってきております、要望も強く出ております。したがいまして、私は、この義務教育年限を削除したというのは、将来を見越して適切な対応だったと思います。この考え方と少子化の中の幼児教育の振興について、大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。

○小坂国務大臣 委員御指摘のように、現行教育基本法の制定時には、戦後の学制改革の中で義務教育の年限を六年から九年に延長することが喫緊の、かつまた重要な課題であったわけでございまして、そのことから九年ということをそこに明記したものと思われます。
 その後の社会の変化等を踏まえまして、義務教育に求められる内容も変化しております。この意味から、その年限の延長も検討課題の一つとして指摘をされているところでございまして、また、委員の御指摘のように、今後の幼児教育も踏まえてどうすべきかという、いろいろな議論がされているところでございます。
 そのような状況の中で、義務教育の年限は、教育の基本原則として教育基本法に規定するよりも、むしろ時代の要請に迅速かつ柔軟に対応することができるように学校教育法に規定することが適当である、このように考えられ、九年の年限を削除したところでございます。
 義務教育への就学年齢を引き下げて五歳児からの就学とすべきとの指摘もあるわけでございますが、これにつきましては、学校教育制度全般の、全体のあり方にかかわるものでありまして、何よりも、国民の幅広い理解を必要とする問題であるために、国民的な議論を踏まえて今後とも検討してまいりたいと存じます。
 また、幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎が培われる重要な時期でありまして、このような幼児期に行われる教育は、子供の心身の健やかな成長を促す上で極めて重要な意義を有するものと考えております。
 したがいまして、本法案の第十一条では、家庭や幼稚園等において行われる教育のみならず、地域社会において幅広く行われる教育も含めて、幼児期の教育の重要性を規定するものでありまして、あわせて、国及び地方公共団体がその振興に努めなければならない旨を新たに規定したものであります。
 今後とも、幼児期の教育の充実にさらに努力をしてまいりたいと存じます。

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○斉藤(鉄)委員 …現行法には、先ほど読み上げましたように、「九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」というのが書いてございますが、案には、九年、そういう具体的な年数が盛り込まれておりません。どのような考え方に基づいて規定しなかったのか。これは民主党案についても書いてございません。なぜ書かなかったのか、これを文部科学省と民主党にお聞きいたします。

○田中政府参考人 義務教育の年限についてのお尋ねでございますけれども、教育基本法が制定されたときにおきましては、まさに戦後の学制改革の中で、義務教育の年限を六年から九年に延長することが喫緊かつ重大な課題だったところでございますが、その後の社会変化等を踏まえまして、義務教育に求められる内容も変化しておりまして、その年限の延長も検討課題の一つとして指摘されている、このような状況の中で、義務教育の年限につきましては、時代の要請に迅速かつ柔軟に対応することができますよう、その始期、終期などとあわせまして、別の法律、すなわち学校教育法に規定することが適当ではないかというふうに考えたところでございます。

○高井議員 お答え申し上げます。
 政府の御答弁と重なる部分もありますけれども、民主党も同様に九年の年限を外しました。民主党案では、現行の義務教育の期間を高等教育にも幼児教育にも長くするということも考えに入れておるために、九年という文字を外したわけでございます。
 これは社会の変化に応じて弾力的な制度構築を可能とするためで、具体的には学校教育法で定めるということも政府と同じところでございます。

○斉藤(鉄)委員 法律の専門家からは、現行教育基本法の唯一の法律事項はこの九年のところだけだ、だから、それを外したらもう教育基本法の意味がないという意見もあったやに聞いておりますが、私は、政治の見識として今回これを外したのは非常に大きな意味がある、このように思います。
 大臣、そうしますと、今後、この九年間という数字、また六・三制についても弾力化する可能性があるのか。また、よく現場で、地元で聞くんですけれども、これは最近の幼保一元化の議論、認定こども園等の議論から、下の方に延ばしていくということの前ぶれですかとか、いろいろ質問を受けるんですが、この可能性についてどのようにお考えでしょうか。

○小坂国務大臣 これにつきましては、義務教育期間を九年より長くすることについて、平成十七年に実施した義務教育に関する意識調査によりますと、賛成する割合が全体としては低い形なんですね。賛成あるいはまあ賛成と回答した割合は、保護者で二四%、学校の評議員では一三%、一般教員で七%、校長、教頭が一〇%、教育長は八%、あるいは首長さんの関係では一一%、こうなっておりまして、低い結果となっております。
 一方、小学校の四、五年で発達上の段階にありながら小学校と中学校の間に学習指導や生活指導などの連携、接続の課題が指摘をされておりまして、このために、構造改革特区制度等を活用しまして、四・三・二制度など九年間の区切り方の新しい試みも一方でなされているところでございます。
 中央教育審議会答申、十七年の十月の答申におきましても、設置者の判断で九年制の義務教育諸学校を設置することの可能性など学校種間の連携、接続を改善するための仕組みを検討する必要があると提言されておりまして、具体的に、東京都内におきましても小中一貫校等の試みが見られるところでございます。
 義務教育の年限の延長や六・三制の弾力化というものは、学校制度の根幹にかかわるものでありまして、何よりも国民の幅広い理解を必要としている問題であるために、国民的な議論を踏まえて今後検討してまいりたい
、このように考えるところでございます。