2360学習指導要領の改訂、教師に対する研修などの実施体制

 

 

164国会 衆特別委 第3回(524日)

○藤村委員 …さて、もう一つ、時間がもう余りないところでございますが、宗教教育についてお尋ねをいたします。
 今回、政府の全部改正案では、「宗教に関する一般的な教養」を追加しただけですよね、現行法から見れば。ですから、今の「宗教に関する一般的な教養」という言葉を追加したことで一体何がどのように変わる、どんな効果があると予測されているのか。それから、このことで、学習指導要領というのはどういうふうに具体的には書き直す方向であるのか、いや、今のままであるのか。その辺は文科大臣にお答えを願いたいと思います。

○小坂国務大臣 今御指摘のように、「宗教に関する一般的な教養」という表現で宗教教育について規定をするわけでございますけれども、現在どのように行われているかということにつきましては、小中学校の社会科、そしてまた高等学校の地理歴史、公民、これらの授業において指導が行われておりまして、例えば歴史における宗教の役割や影響、それから世界の宗教の分布などが取り上げられているところでございます。
 今後、改正の趣旨を踏まえまして、学習指導要領の見直しを検討するなど、宗教に関する一般的な教養についての指導が各学校において一層適切に行われるようにしてまいりたい、こう考えているところでございまして、宗教教育についてどのように変わるかということで申し上げれば、基本的には、今申し上げたような具体の指導を行うことを今後とも継続する中で、学習指導要領の見直しをする中で、必要な部分が出てくれば、その部分について検討をさせていただく、こういうことになると思っております。

 

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○斉藤(鉄)委員 この新しい条文に基づいて、具体的には、今後学校でどのように進めていくのか。今、馳副大臣がおっしゃったことですと今までもやってきたような気がするんですが、新たにつけ加わる内容としてどんなものがあるでしょうか。

○馳副大臣 具体的に私が申し上げるというよりも、今回の改正そして今回の議論を通じて全面的な改正といたしておりますので、中教審において学習指導要領を全面的に見直しをしていただくということになりますから、今回の改正の議論を通じて、宗教に関する一般的な教養といったことで、発達段階に応じてどのような内容がよいかということが中教審において検討されるべきものであると考えております。
 現状をちょっと申し上げますと、例えば、小学校の社会では大仏造営の様子とかキリスト教の伝来について、中学校の社会においては仏教の影響などについて、高等学校の公民においては人生における宗教の持つ意義や日本人に見られる宗教観などについて、学習指導要領に基づいて指導されているものでありまして、また、今回、いわゆる国際的な中においての宗教の役割とか特色とか我が国とのかかわりといったことが検討されて、学習指導要領に規定されるものと考えております。

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○末松委員 …それでは申し上げますが、一般的教養という文言が入った中で何がどう変わるんですか。どう変えていくのか、そこについて御説明ください。

○小坂国務大臣 今回の改正によって宗教に関する一般的な教養というもの等が盛り込まれたことによって、現在小中学校の社会科や高校の地理、歴史、公民において指導が行われているこの分野について、現行は歴史における宗教の役割や世界の宗教分布などが取り上げられているわけですが、今後は、改正の趣旨を踏まえまして学習指導要領の見直しを検討するという段階において、宗教に関する知識や宗教の意義などについての指導が各学校において一層適切に行われるような記述方式に変えていく、指導方式に変えていくということでございます。
 具体的に申し上げますと、例えば、中学校の社会科において世界の各地域における宗教の特色や宗教の社会生活における機能などについての記述を盛り込むなど、そういった方法が考えられるわけでございます。現在は、中学校においては、地理においての分布図程度しか取り扱っておりませんけれども、その中学校の社会科において世界の各地域における宗教の特色や宗教の社会生活における機能などについて記述を盛り込む、こういうことを考えているところでございます。


 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○末松委員 …ちょっと時間がなくなったのでもう一つ聞きますが、この宗教教育をやる場合に、だれが教えるんだという話がございます。
 例えば、大学時代に宗教を専攻していない人なんというのは、教員で宗教を教えるといったってできないわけですよ、そういった宗教教育も行われていないという話であれば。そういったときに、そういう人から教えられる子供というのは、宗教教育が広がる、知識が広がることはあり得ませんよね。その辺については、だれが教えるということについてはどう考えておられるんですか。

○小坂国務大臣 先ほど委員が、慎重になる余り、こういう形で文科大臣が言えばますます慎重になるとおっしゃいましたけれども、だからこそ、今回の法案の中に宗教の一般的な教養ということを書き込んだわけですね。
 それはすなわち、今まで、宗教というのは教えるのが難しい、だからもうこの項は飛ばしてしまおう、宗教については、書いてあるけれども、教科書を読みなさい程度で一切触れないでいこうというような取り扱いをなされることもあるわけでございまして、そういうようなことにならないように、一般的な教養はしっかり教えてくださいよということを、やはり尊重してくださいということを申し上げているわけですね。そういう意味で、その難しさというものを理解しながらも、しっかり取り組んでいただきたいという気持ちは持っているわけでございます。
 その中で、委員は、先ほど挙げていただきました、イスラム教の中の各派だけでもたくさんあるということを御紹介いただきました。それだけの宗教知識を持っている教師は恐らくおらないと思うんですね。多分、末松委員のように豊富な宗教知識を持っている教師がどれだけいるかと言われれば、それはかなり限られていると言わざるを得ないと思います。
 したがって、そういった意味で、宗教の一般的な教養をそこまで教えるという教師はいないかもしれませんが、私どもが求めているのはそうではなくて、宗教に対する寛容の態度、そして宗教に関するいわゆる一般的な知識、歴史とか分布だとかそういった形でございますので、そういったことについては、社会における地理、歴史等を教えられる先生たちに、この宗教の一般的な教養ということが盛り込まれていることによって、学習指導要領の中でも取り上げられることによってそういったものについて研究活動をしていただいて、そういう資質を身につけていただくということが求められるわけでありますし、今の先生方にそういうことを求めることは可能であろう、こう考えているところでございます。

○末松委員 私が申し上げたかったのは、教師に対しても宗教的な研究の成果を踏まえた形での教育がしっかりと得られて、そして、生徒たちにしっかりそれが教えられるような体制及びその仕組み、システムをつくるべきだという話をしているわけであります。ですから、何も無理なことを無理な形で言っているわけではありません。
 今本当に教える人そのものが不足しているという状況だろうと思いますし、今大臣が言われましたように、実際にいろいろな世界も回って、本当に宗教的なものがいかに重要か、根源をなしているかという話になりますので、実際に日本で有識者とかさまざまな宗教関係者等呼んで、一堂に会して、どこまで日本において宗教教育というものがなされて、そのテキストあるいは指導要領というものがつくられるべきなのか、そこを大々的に御意見を求めて、そういった中で、何か新たな挑戦というんですか、そこをやっていただく中で、世間の関心も集めながら、宗教について、これほど日本で一生懸命考えることは重要なんだという一つの大きなデモンストレーション効果にもなりますし、非常に議論が百出して大変かもしれないけれども、そういったことを積み重ねていって、そこで宗教教育のテキストなり指導要綱をつくっていただき、それでもって、子供さんが宗教というものに対してはっきりとした、あるいははっきりでなくてもいいですよ、おぼろげながらでも結構です、そういったものを得ていく。そういうことが、日本のまさしく美しい、伝統的な社会を再度見直しながら、日本人の美しさを思い出しながら、また世界の交流にも大きく役立っていくと思うわけなんですが、そこの御決意といいますか、そこをちょっと、もう一度お聞きしたいと思います。

○小坂国務大臣 委員がおっしゃっている、宗教の関係者あるいは有識者の方々を集めてということ、否定するものではございません。
 しかしながら、現実的な面も考える中で、また、これまでどういうことをやってきたかということを簡単に申し上げたいと思うんですが、中教審の答申に至るまでの審議の過程においても、約三百人余の専門的な知識をお持ちの各分野の方々に意見の陳述をお願いしたり、そういう方々に関与していただいて、答申というのはまとめられてきているわけですね。
 それから、これから学習指導要領というものを改訂しなきゃいけないという作業も出てまいります。今回のこの一般的な教養という部分が入ったことによって、それにどのような学習指導要領の変更が必要かということはこれから検討するわけでございますが、その検討の中において、今おっしゃったような意味でパブリックコメントを求めるということで、そういった方々の意見も反映できるような機会というものはつくってまいりたい、このように考えているところでございます。

 

164国会 衆特別委 第7回(61日)

○糸川委員 ありがとうございます。
 もうほとんど時間がないんですが、宗教教育について少しお尋ねをさせていただきたいんですが、宗教教育につきましては、現行法においても第九条に規定されておるわけでございます。
 宗教的情操といった文言をめぐって現在議論されておるわけでございますが、人間は、一生を生きていく間に幾度となく挫折を味わって、苦しんで、みずからと向き合いながらそれを乗り越える、そして成長していく存在であるわけでございます。
 変化の激しい我が国の社会の中で、あすの我が国を背負っていく人となるためには、私は、人間のあり方、こういうものを考える宗教教育は、これまでに増して一層大切にしていかなきゃいけないのかなというふうに考えておるわけでございます。宗教教育というものは非常に価値があるというふうに考えておりまして、これは積極的に法案に位置づけていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
 現行法の制定時の国会質疑においては、宗教に関する寛容の態度は教育上これを尊重しなければならないと。宗教の社会生活における地位は教育上これを尊重しなければならないというより、むしろ重点は寛容の態度に置かれているのでありまして、宗教の社会生活における地位を尊重していかなければならぬ、その地位を特に重んずるというのではなくして、その地位がいかにあるかということを重要視していかなければならぬ、こういう意味に解釈すべきものというふうに考えております。最初はむしろ、宗教的情操の涵養、こういうことを説くということになったのでありますが、かくのごときものは改めたらよいだろうという意見が強くなってまいりまして、そうしてここには、特に宗教に関する寛容の態度を尊重しなければならぬ、かくのごとく改められた次第でございますというふうにあるわけでございます。
 宗教教育を行う際には客観性に留意する必要があることはわかるわけでございますけれども、それでは、こういうことを踏まえて、宗教に関する一般的教養、こういうことについては、今後、学校において具体的にどのような指導が行われるようになるのか、総理の御見解をお聞かせいただければというふうに思います。

○小坂国務大臣 まずもって私の方から説明をさせていただきます。
 一般的な教養としての宗教に関する授業はどのようにやっていくかということでございますが、まず、世界の中で三大宗教のような宗教があること、違いがあることを述べるとともに、その世界的な分布、あるいは、宗教というものが人知を超えていくという、道徳の教育の分野で今行っているような、そういった、人間の宇宙の神秘や、命がどのようにはぐくまれ、そして、我々は一体どこから来てどこに行くのか、そういったことに対する疑問について考える。
 そういったことを通じて宗教に対する一般的な教養をまず身につけていただくということによって客観的に宗教に対する知識を積んでいただき、また、宗教の社会的な地位について、現行に引き続いて規定をすることによって、教育の現場において適切な宗教教育がなされるように、委員御自身がおっしゃったように、宗教に関する取り組みというものを教育現場で客観的かつ積極的に取り組んでいただきたい、そういう趣旨から一般的な教養の規定を加えたところでございます。

○糸川委員 では、ぜひ総理にも、今文部科学大臣がおっしゃられたとおりなのか、御見解をお伺いしたいと思うんですが。

○小泉内閣総理大臣 宗教は、生まれて、家庭に育つと、親の持っている宗教だけしか触れる機会はない。しかし、学校に行って、社会に出れば、ああ、仏教だけじゃない、キリスト教もイスラム教も、さまざま世の中には宗教というのがあるんだなと。やはり、人間の能力といいますか、人間の存在を超えた何者かがあるんだ、我々は人間だけで生きているのではないなと、自分を超えた存在に対して敬意をあらわす、恐れを持つ、畏敬の念を持つ。そして、自分を大事にしたい、同時に、自分と違った者を愛するという気持ちを持つということにおいて、私は、さまざまな、人間を超えた神様なり仏様なり天の力があるんだという意味において、長年人間が宗教心を持って、全世界、それぞれの地域にはそれぞれの、自分たちとは違う何か恐れ多い存在があるぞという形でこの世界は成り立ってきたと思うのであります。
 そういうものの理解を増すということにおいては、私は、人間性を豊かにする上において有用だと思っております。

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○糸川委員 しかし、一方で、これまでの学校現場では、例えば宗派教育の禁止、この規定を拡大解釈して、ややもすると宗教に関する教育、これにいわば腰が引けていたのではないかな、こういうふうにも言われているわけでございます。
 私は、これからの国際社会で活躍できる日本人というのは、外国人に文化を伝えられる、そういう日本人である必要があるのではないかなというふうに思うわけでございます。今回、宗教に関する一般的な教養、これを加えることで、今後は学校現場で適切な形での宗教教育の充実が図られていってほしい、このように思うわけでございます。
 そこで、小坂大臣にお尋ねさせていただきますが、今回のこの改正を踏まえて、学校現場において、具体的にどのような宗教教育の充実を図っていくのか、お聞かせいただけますでしょうか。

○小坂国務大臣 まず、現行の学習指導要領における宗教に関する記述としては、小学校の社会で、大仏造営の様子だとかキリスト教の伝来について述べる、あるいは中学校の社会で、歴史的な意味における仏教の影響等について述べる、あるいは高等学校の公民の倫理等の時間において、人生における宗教の持つ意義とか日本人に見られる宗教観などについて述べておるわけでございます。
 また、歴史における宗教の役割、あるいは世界の宗教の分布など、宗教に関する知識や宗教が社会生活において果たしてきた役割などについては、今後とも引き続き指導をしていくわけでありますけれども、今後は、今回の改正趣旨を踏まえて、学習指導要領そのものの見直しも必要と考えております。
 その際、その中においては、例えば中学校の社会科などにおいて、世界の各地域における宗教の特色や宗教の社会生活における役割についての記述をさらに盛り込むなど、指導を充実する観点から今後検討してまいりたい。一般的教養としての宗教に対する正しい知識を持ってもらうこと、それによってまた自分の周辺に対する宗教というものに興味を持ってもらって、それをみずから学んでいただく、そういう宗教に対するかかわりが必要か、このように考えております。