2470民主案における不当な支配削除の意味

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○鷲尾委員 …政府・与党案の第三章第十六条の「教育行政」に、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」とありますが、民主党案にはこの記載、いわゆる不当な支配に関する記述がありません。この点、民主党案はなぜ削除されているんでしょうか。提案者にお聞きいたします。

○笠議員 委員ももう御存じのとおり、これまで不当な支配という、この文言についてはさまざまな解釈があったわけです。そして、当時、昭和二十二年、この教育基本法、現行法ができたときの解説などを見ても、例えば、教育に侵入してはならない現実的な力として、政党、官僚、財閥、組合などの国民全体ではない一部の勢力が考えられるというような解説もあるように、これまで本当に不毛な論争が繰り広げられてまいりました。また、この不当かどうかの判断というものも、だれがどういう基準で行うのかということについても、これは非常にあいまいなままです。
 ですから、私どもは今回、日本国教育基本法をつくるに当たって、民主的な運営という、より明確な概念を用いさせていただいております。そもそも、不当な支配に服することなくとは二重の否定表現で、法文としては非常に異例であり、素直に解すれば、正当な支配に服することが言いたいものと理解しておりますが、不当という言葉は基本法にはなじまないと考えております。
 私どもは、現行法が、教育が不当な支配に服することなくと言っているのは、教育は、法に基づき、公正公平な立場から国民全体に対して奉仕するということだと考えております。ですから、こうした考え方を踏まえて、民主党案の中では、第四条で「学校教育においては、学校の自主性及び自律性が十分に発揮されなければならない。」とし、また第十八条、教育行政において民意を反映させることとさせていただいております。

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

下村委員 では、具体的にそれを下部法令等でどう担保するかということについてお伺いしたいと思いますが、その前に、民主党の提案者に対して、同じ教育行政について、民主党では十八条になっていますが、政府案とどう違うのかということでお聞きしたいと思います。
 それというのも、我々自民党の中でも、民主党案、全般的にはよくできているなというふうな感想を持っている人も結構多いんじゃないかと思うんです。ただ、よく民主党がまとまったなと、なおかつ、民主党を支援している団体がよくこれで了解したなということについては、率直なところ、我々はちょっと不思議に思っているんです。そのポイントが十八条だと思っているんですよね。この十八条の教育行政はそういう組合組織等も同意するような文言になっているのではないか、我々はそういうふうに解釈せざるを得ないと思うんですね。
 それというのも、第一項で、「教育行政は、民主的な運営を旨として行われなければならない。」この「民主的な運営」とは何なのか。それから、第二項でも、「地方公共団体が行う教育行政は、その施策に民意を反映させるものとし、その長が行わなければならない。」、民意を反映させるということは、一体何なのか。それから、三項目もそうなんですね。「地方公共団体は、教育行政の向上に資するよう、教育行政に関する民主的な組織を整備するものとする。」
 一つの法律の条文の中に、一項、二項、三項と、いずれも民主的云々という言葉があり過ぎることによって、この民主的というのは、恐らくそういうのが前提としてあって、そして支援団体の協力も得られたんだろうというふうに思っている人が我々は結構多いんですが、その真意についてお聞きしたいと思います。


○笠議員 今、よくまとまったなということで、まとまるべくしてまとまったんです。これは本当にいろいろな議論がありましたけれども、今、具体的な御指摘として、私どもが、「不当な支配」をなくして「民主的な運営」というふうにしたのはどういうことだということだと思うんですが、先ほど下村委員の方からもあったように、やはりこの「不当な支配」というのはさまざまな解釈があって、これからもやはりそのことによって混乱を招く危険性が非常にあるという危惧は、これはもう本当に共有をしております。
 そして、今御指摘のような心配ですか、例えば私どもの関係する一部の団体がどうなんだということでございますけれども、いや、そういうことは私どもはないと思います。それはなぜかというと、これは、十八条の四項で、学校理事会を置くことを明記しております。そこには、学校関係者だけでなくて、保護者はもとより、あるいは地域住民の方にも参画をしていただくことになっております。まさに学校を地域に開いて、そして地域によってもきちんとチェックをしていくということ、そのことで懸念を払拭できますし、さらには、首長の責任を明確にしておるわけです。
 これは、当然ながら、民主政治の基本というか、選挙で選ばれるのが首長でございますから、首長に権限を持たせているわけで、これを否定するということになりますと、そもそも民主主義というものが成り立たないということになりますので、我々は、選挙で選ばれる首長の権限というものをしっかりと明確にさせていただきました。