公明党(2007年7月)


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「徳育の教科化」の問題点 特定の価値観押しつけに 教員養成や成績評価も非常に困難

問い
政府の教育再生会議は第3次報告で「徳育の教科化」を提言すると聞きました。一方、この提言について公明党は慎重な対応を求めていますが何が問題なのでしょうか。
 (東京・足立区 Y・Mさん)

党教育改革推進本部事務局長
山下 栄一 参院議員

政府の教育再生会議は25日、第3次報告で小中学校の現在の「道徳」の時間を「徳育」に変え、数学や国語と同じように「教科化」し、徳育の教科書作成などを提言する予定です。これに対し、公明党の文部科学部会が11月16日に、「徳育の教科化」に慎重な検討を求める福田康夫首相あての申し入れ書を町村信孝官房長官に提出したのをはじめ、これまで一貫して政府に慎重な対応を求めています。

「徳育の教科化」の何が問題なのでしょうか。一つ目の理由として、昭和26年に教育課程審議会で示された「道徳教育は学校教育全体の責任である」「道徳教育を主体とする教科、あるいは科目を設けることは望ましくない」という答申があります。この答申は引き続き堅持されるべき大原則です。教育再生会議の提言はこうした原則に対する根本的な変更であり、仮に変更するなら教員や保護者を納得させる総括と検証が必要です。私たちは、なし崩し的な政策変更には反対です。

その上で、「教科化」には三つの問題点があります。第1は教科書を作成することの問題です。日本の教科書は政府が検定しますので、国が子どもたちに特定の価値観を押し付けることになります。そもそも検定制度は、民間の出版会社発行の教科書を、主に学問的見地から第三者機関としての検定審議会が行うものです。同審議会が価値観にかかわる検定意見を付することは不可能です。

第2は教員免許の問題です。教員養成課程の認定も教員資格付与も権力的な行政行為です。多様な価値観にかかわる道徳に対し免許制度、特に教員免許制度を付与することは相いれないものです。

第3は成績評価の点です。教科には成績評価が伴います。道徳の客観的な評価は困難です。以上のような点から徳育の教科化は教科の本来の性格上、成立しにくいものです。

現代は何が本物で何が偽物か分かりにくくなっています。牛肉や和菓子の食品表示偽装、建物や建材の設計偽装、テレビ番組の報道偽装、偽メール問題の国会質問偽装、蔓延する振り込め詐欺など日本全体が偽装社会といわれます。

大人社会そのものが自省の心を失い、他者への配慮や同苦する心を失っています。大人自身が自らを省みないで、どうして子どもに道徳を教えることができるでしょうか。道徳教育を叫ぶ前に大人が自省することから道徳教育が始まるのではないでしょうか。

公明党はかねてから、子どもの豊かな心を育てるために、体験学習の重要性を主張し、学校教育、社会教育における自然体験、職業体験、読書体験、奉仕体験活動などを推進してきました。バーチャル(仮想)体験が広がる一方の現代で、人や自然と直接触れ合う機会を増やすことによって倫理観を育てることが大事です。過日の福田首相への申し入れでも、体験学習、体験活動への財政支援を要望しました。

また、道徳教育には学校はもちろん、家庭、地域社会の協力や連携が重要です。2008年予算の財務省原案で「学校支援地域本部」(仮称)の創設が盛り込まれました。いじめ、不登校の増加で国も自治体も学校への管理、注文が強まる一方です。しかし学校現場の創意工夫する意欲を摘み取ってしまって、子どもの豊かな心を育てることは不可能です。その意味で学校への地域支援体制づくりは極めて重要な視点です。

外から規制する管理型から内面の豊かな心を育む、または引き出す内発型へ教育の視点を転換することが「徳育」に直結することを強く主張したいと思います。

公明新聞 2007年12月24日

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公明党マニフェスト2007政策集

1.まかせて安心! 子育て支援・年金・医療・介護!
(1)子育て20(ニーマル)安心プラン
「20歳まで」安心して育てられる「20項目」を「平成20年」までに達成。
<児童手当などの拡充>
@児童手当の支給対象を中学3年生まで引き上げます。また、次の段階として支給額も第1子1万円、第2子1万円、第3子以降2万円へと倍増をめざします。
A出産育児一時金を現行35万円から50万円への引き上げをめざします。
B保育所受け入れ児童数を拡大します。いつでも誰でも利用できる「保育サービス」、延長保育、休日保育、保育ママなど多様なサービスを拡大します。
C産科・小児科など医師が不足している特定の診療科に対して診療報酬の引き上げなどにより増員を図るとともに、小児救急医療体制の整備(24時間対応可能)を含め、小児医療、周産期医療の提供体制の充実を図ります。

<若年者雇用への支援>
L「若者自立・挑戦プラン」の効率化を図り、フリーター、ニートの総合的な若年雇用対策を強力に推進します(教育段階からの予防的対策に重点化を図ります)。
M新規学卒者のミスマッチ縮小のための若年者ジョブサポーターを拡充します。
N高校中退者再出発支援窓口の導入と推進を図ります。
O就業経歴を書き込める「キャリアパスポート」制度を創設します。就職活動の手順が分かる「キャリアマップ」の作成と推進を図ります。生涯を通じて教育訓練・スキルアップできるシステムの整備を推進します。パソコンやIT等を活用し、職業教育をいろいろな場所で気軽に受講できる「日本版ラーンダイレクト(草の根e―ラーニング)」を創設します。社会が必要とする職業能力を身に付けた若者に国が「証明書」を発行する仕組み「YES―プログラム(若年者就職基礎能力支援事業)」の整備、推進を図ります。

<子育て支援追加プラン>
■「仕事と生活の調和推進基本法」(仮称)を制定し、国を挙げて企業と国民が一体となった「働き方改革」を推進します。また、テレワーク(ICTを活用した場所と時間に制約されない柔軟な働き方)普及に向けた環境整備を図ります。
■幼稚園や保育園の利用料の軽減など、就学前の子育てにかかる負担軽減を推進します。特に、私立幼稚園の就園奨励費を拡充し、公立幼稚園や保育園がない地域の教育費の負担軽減を図ります。

5.進めます! 現場主義の学校改革と人材育成!
(1)教育行政を地方への権限移譲を中心に抜本改革し、学校・教員の教育力を再生
■「新たな少人数教育システム」(画一的ではなく学校が主体的にそれぞれの実情に応じて少人数学級・ティームティーチング等を選択できる仕組み)の導入や、「学校運営協議会」の全国展開等により、教員人事、学級編制の権限を抜本的に地域・学校に移します。
【国は教育条件、内容の最低限の基準だけを定め、地域・学校が教育目標、教員人事、学級編成、カリキュラム等を自由に設定できるようにします】
■小・中学校において、保護者、地域住民等が授業で教員をサポートする「教員サポーター制」(仮称)を導入します。
また、教員評価を徹底するとともに、教員養成のための大学院を創設します。
(2)体験学習の全国展開
■すべての小学生が農山漁村で一週間以上の体験留学ができる機会を提供します。これにより、子どもの豊かな心を育み、地域コミュニティの再生に貢献します。
■すべての小・中学生が1週間以上の職場体験活動ができるようにします。
■すべての小・中学生に少なくとも年に1回、本物の文化芸術に触れさせる機会を提供します。
■文科省、環境省、NPO等の連携で、全国の市町村に環境体験学習のコーディネーターを配置します。先生が体験学習に関する情報・プログラム・ノウハウにアクセスできる体制を整備します。自然体験学習に関する全国ネットワークを構築します。
■NPOや地域ボランティアと連携し、補習授業、職業体験活動などを行う「放課後・土曜日子どもプラン授業」を拡充します。また中学校第2学年時の「働くウイーク」(職業体験週間)を導入します。
(3)学生全員に奨学金を貸与
■有利子奨学金の月額貸与限度額を10万円から12万円に引き上げます。また奨学金返還時には、返還額の利子相当額を税額控除できる制度を創設します。
■現在の奨学金制度について、各大学ごとの採用枠を撤廃し、1次募集の段階ですべての学生に奨学金が貸与できるようにします。
■海外留学を希望する学生への奨学金について、派遣1万人計画等を策定し、抜本的に拡充します。
(4)特別支援教育の体制強化
■学校における発達障害児等への対応について、必要な財政支援を含め充実を図ります。具体的には
@教員配置の拡充と研修体制の強化
A学校種別を問わない特別支援教育コーディネーターの配置
B複数の学校を支援する地域コーディネーターの配置
C幼稚園や高等学校への特別教育支援員の配置
D医療ケア確保のために特別支援学校への看護師の配置E作業療法士等の外部専門家の活用などを進めます。
(5)高校における職業教育の見直し・強化
■普通科を含め、1週間以上のインターンシップを実施します。
■地域の産業界等と連携し、専門高校の職業教育を強化するとともに、国が財政支援を行い、スーパー専門高校を拡充します。
(6)小学校の英語教育の必修化
■小学校で英語教育を必修化(毎日20〜30分の英会話授業)。授業は、民間の英会話学校に委託などの方法で行い、中学校卒業段階で日常英会話ができるまでにします(10年計画で)。
(7)学校の安全
■人的警備を必要とする小学校等に、警察官OB、ボランティア等を活用した「ス
クールガード」(学
校安全警備員)を5年間で配置します。
(8)いじめ、不登校問題等対策
※進捗状況:2005 年度、全国の86.7%の小学校で地域ボランティアによる巡回・警備を実施。2006 年度、防犯の専門家や警察官OB からなるスクールガードリーダー約2900 人を全国配置。2007 年度予算では、人的警備を必要とするすべての小学校にスクールガードを配置するための措置がなされた。
■子どもや親などからのSOSに即時に対応できるように、第三者機関による「いじめレスキュー隊を設置します。
■地域の中に子どもが安心できる居場所として、NPO法人等による不登校のためのフリースクールなどを活用し「ほっとステーション」を設置します。
■子どもたちの心の拠りどころとなり、また、教員と子どもを結ぶ懸け橋として不登校の防止に役立っている、「メンタルフレンド制度」を導入し、教員志望の学生等を学校に派遣します。

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