新自由主義教育改革批判


教育関連3法案

教育再生会議

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教育関係3法「改正」法の成立にあたっての日弁連コメント

2007年6月20日
日本弁護士連合会

本日、学校教育法、地方教育行政組織法、教育職員免許法などの「改正」のための教育関係3法案が成立した。

同法案は、本年6月14日に公表した当連合会の「教育関係3法『改正』法案に関する意見書」に指摘しているとおり、国家による教育内容統制をもたらし、国・都道府県教育委員会による市区町村教育委員会と私立学校への監督・統制を強化し、教員免許更新制により教員の自主性・自律性に萎縮効果をもたらすなど、憲法の定める子どもの教育を受ける権利・学習権に対応してこの充足を図るべき立場にある国の責務に違背する形で国の教育内容統制を進行させることになるおそれが極めて高いものである。

当連合会は、今後、この教育関係3法「改正」法の実施細則の制定や運用において、政府が「変更はない」と答弁している旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決(1976年5月21日)の基準に基づく教育基本法16条1項の「教育は不当な支配に服することなく」の原則が堅持されるよう、また、憲法13条、23条、26条等に示される憲法の教育条項に抵触して教育現場での思想信条の自由、教育を受ける権利・学習権が侵害されることのないよう、強く求めるとともに、引き続き不断の取り組みを行うものである。

以上

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教育三法案の強行採決に抗議する

本日(6月20日)、いわゆる教育三法案(学校教育法等、教育職員免許法及び教育公務員特例法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の「改正」案)が参議院本会議で強行採決された。

東京の弁護士約450名が結集する自由法曹団東京支部は、この強行採決に厳しく抗議する。

東京の教育は重大な状況にある。日の丸・君が代が強制され、このことを巡って教職員に対して都教委による恣意的な処分が繰り返されている。副校長制がすでに導入されて、校長、副校長、主幹教諭らによる『企画調整会議』を学校運営の中枢にするよう促されている。こうした東京の教育の現状は教育三法の先取りといえるものである。
教育三法は、「我が国と郷土を愛する態度を養うこと」を明記し、副校長・主幹教諭を設け、教育に対する国家統制を図るものであるが、その成立は上記のような東京と同様の事態を全国に拡大させるおそれがある。

だが、東京においても、こうした動きは大きな矛盾に直面している。日の丸・君が代の強制については昨年東京地裁で違憲・違法の判決が出された。東京が全国に先駆け導入した主幹は応募者が減り、年齢や配置基準などの見直しを余儀なくされた。

教育三法が、教育の国家統制を目指してその本質をあらわにするならば、それは東京の範囲を超え全国規模で矛盾と摩擦を引き起こすであろう。そして、子どもと教育を守るために改悪教育基本法と教育三法に反対する運動が現在よりもいっそう強力に展開されることは疑いない。東京の弁護士は全国に先んじたその経験を生かして教育への取り組みを強める。

私たち自由法曹団東京支部は、教育に対する国家統制に反対し、改悪教育基本法と教育三法の弊害防止と除去のため、さらなるたたかいに邁進するものである。

2007年6月20日

自由法曹団東京支部
支部長 島田修一

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談話 政府・与党による教育3法案の強行採決に抗議する

   2007年6月19日    子どもと教科書全国ネット21事務局長・俵 義文

政府・与党は、6月19日17時20分過ぎに、参議院文教科学委員会で教育関連3法案(「学校教育法等の一部を改正する法律案」「教育職員免許法及び教育公務員特例法一部を改正する法律案」「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」)の採決を強行した。私たちはこの政府・与党の暴挙―数の暴力に怒りをこめて抗議するものである。

教育関連3法案は、日本国憲法と国連・子どもの権利条約に違反する改悪教育基本法を実施・具体化し、教育の専門家でない委員が教育現場を無視してまとめた教育再生会議報告を稼動させるためのものである。安倍首相とその政権がめざす新自由主義と新保守主義による「教育改革」という名の「教育破壊」を推し進めるための全面的な改悪法案である。その最大のしかも最も重要な問題点は、この3法案は、根本的に教育のあり方を変えてしまう全面改悪であり、教育については国家が何でもできる、政府・文部科学省による教育の国家統制システムをつくりあげるものである。

だからこそ、衆議院でも参議院でも、与党の推薦する参考人・公述人からさえ疑問や批判が多く出されていたように、教育3法案に対しては、教育研究者、学校現場はもとより、教育委員会関係者、教育に関係する市民からも多くの批判が出されていた。衆議院での採決にあたって11もの付帯決議がつけられたことはこの法案が欠陥法案であることの証しである。参議院での審議でも、この付帯決議をいかに解決するのかという議論をはじめ、参考人・公述人の意見、教育や法律の専門家をはじめ多くの関係者から出された疑問や批判は政府答弁によっても何も解明されていない。教育関連3法案は廃案にするしかない欠陥法案である。

安倍首相は戦後の日本国憲法体制から脱却して「戦争する国」づくりをめざし、憲法9条改悪のための改憲手続き法と共に教育3法案を最重点課題としてきた。政府・与党は、今166通常国会では、9条改憲のための改憲手続き法を強行成立させ、今また、教育3法案を何が何でも会期末までに成立させるために、審議が全く不十分であったにもかかわらず、数を頼みに採決を強行した。これは、議会制民主主義さえも踏みにじる暴挙であり、私たちは、怒りを込めて抗議すると共に、参議院本会議で可決を阻止し、廃案に追い込むために最後まだたたかうことを表明するものである。

なお、この採決強行への「抗議談話」発表にあたり、これまで私たちが指摘してきた3法案の問題点を「資料」として提示し、広く国民の皆さんに同法の危険な内容とねらいを知っていただきたいと願うものである。

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参議院文教科学委員会における 「教育関連三法案」の強行採決に対する抗議声明

2007年6月19日 日本教職員組合

本日、政府・与党は、参議院文教科学委員会において「教育関連三法案」を強行採決した。

委員会の審議終了後、民主的な手続きをふまず、突如採決に及んだことは、国会運営および国会審議を無視した、民主主義国家として恥ずべき暴挙と言わざるを得ない。

学校現場に直結する重要な法律を、昨年12月の教育基本法改悪と同様、十分な審議を尽くさず、審議を求める声を一方的に無視し、与党が数の力で強行採決したことに断固抗議する。

「教育関連三法案」は、審議期間がわずか1ヶ月足らずという常軌を逸した中教審答申をもとに法案化された。国会審議においても、衆議院では、特別委員会を設置して審議を急ぎ、参議院の文教科学委員会では会期日程をにらみ、かけこみで採決にふみこんだ。こうした「改正ありき」で審議をすすめ、教育を政争の具とすることは、断じてあってはならない。

法案の内容は、「学校教育法」における規範意識・公共の精神や国を愛する態度など画一的な「公」の考えを押しつける「義務教育の目標」規定、「教員免許法」における教職員の資質向上につながらない教員免許更新制の導入、「地方教育行政法」における国の権限・管理強化につながる「是正要求・指示」など、教育現場の実態を全くふまえず、地方分権にも逆行するものである。

未来を担う子どもたちや教職員に直接関わる法案審議であるのに、教育現場にどのような変化をもたらし、何の目的でそれを推進するのか、具体的な提示があったとは言えない。教育制度や教育課題の検証もなされないまま、新たな法律で対応するのは無用な不安や混乱を生じさせるだけで、何の解決にもならない。国際的な動向である子どもの権利条約にも反している。

いま、学校が求めているのは、子どもと直接かかわるための教育条件整備である。そのことが教育関係者、教育研究者等の参考人や公述人等からも、強く求められた。こうした審議をふまえれば、当然「教育関連三法案」は、審議未了・廃案とすべきである。

わたしたちは、「教育関連三法案」の強行採決に断固抗議するとともに、参議院本会議で可決・成立させるという暴挙を避け、直ちに審議をやり直すよう強く求める。

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『教育改悪3法案の委員会採決強行に抗議する』

2007年 5月17日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男

政府、与党は本日夕刻、衆議院教育再生特別委員会において、教育改悪3法案の採決を強行しました。

憲法の諸原則に反して、教育のいとなみの破壊に導きかねない本質を持つ法案について、これまでの審議を通じて浮かび上がった重大な問題点の解明を行うことなく、採決を強行した与党に対して強い抗議の意思を表明するものです。

この3法案は、昨年末に強行された教育基本法改悪を具体化するものであり、憲法改悪と一体に、その先取りをはかろうとするものです。

学校教育法改悪は、「国を愛する態度」を子どもたちに押しつけて内心の自由を侵害するものです。しかも、押しつけられようとしている「愛国心」が、過去の侵略戦争を自存自衛の正義の戦争であるとする「靖国史観」であることが、本日の特別委員会の質疑を通して明らかにされました。きわめて重大な問題であり、この問題を放置したまま採決することなど断じて許されません。また、学校教育法改悪は、授業を持たない副校長や、主幹教諭などの新たな職をもうけて管理支配を強めるだけでなく、現場の長時間過密勤務をいっそう悪化させるものです。教員免許法等改悪は、教員免許更新制を導入して政府いいなりの教員をつくるとともに、行政権力が「指導が不適切」と断定した教員を免職にできる措置を導入するなど、乱暴極まりないものです。地教行法改悪は、地方教育に国が介入するしくみをつくり、教育の地方自治の原則に真っ向から背くものです。

これまでの審議においても、3法案が、憲法が定めた教育の原則に反しており、競争と強制によって子どもたちと教職員を追いたて管理し、学校教育を変質させるものであることが明らかになっています。

中央公聴会や地方公聴会においても、地方自治体当局者や地方教育委員会当局者を含めて、法案に対する懸念と批判が寄せられています。

私たちは、衆議院が、このような法案の可決を強行することなく、審議を尽くすよう、衆議院議長に強く求めるとともに、引き続き、教育改悪3法案の廃案をめざして全力を尽くす決意を表明するものです。

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「教育関連三法案」対する要請

2007年5月17日
日本教職員組合
中央執行委員長 森越 康雄

日頃より、日本の教育の発展や教育条件の整備のために御尽力いただいておりますことに敬意を表します。

さて、3月30日、国会に提出された「教育関連三法案(改正案)」は、衆議院「教育再生に関する特別委員会」で審議がすすめられています。法案に対し、さまざまな意見・問題点が出されている中、本日にも法案の採決がなされようとしています。

「改正案」の内容は、国の管理・権限を強化するものであり、主体的な教育活動が阻害される懸念は拭えません。また、地方に対する国の関与を強め、教育の地方分権を後退させることにもつながりかねません。

教育関連三法案は学校現場に直結する重要な法律です。教育制度と教育内容の点検、検証を行うとともに、実証的なデータにもとづき十分議論をしていく必要があります。また、教育課題に対し、子ども・保護者・教職員・教育研究者等の意見などをふまえ、幅広い議論をとおして社会的な合意形成を図ることが必要です。

 拙速に審議をすすめることなく、慎重を期した審議が行われますよう、以下の事項について要請いたします。

  1. 教員の養成・採用・研修の改革にあたっては、一体的・総合的なものと捉えてすすめるべきである。とりわけ、資質向上については、現場での実践・研修や子ども、保護者、地域とのかかわりによって培われるものであり、教員免許更新制は導入すべきではない。
  2. 憲法や「子どもの権利条約」の理念を尊重し、「公」の考えを押しつけるのではなく、個人の学ぶ意欲や権利が尊重されるものとなるような目的・目標を規定すべきである。
  3. 地方分権の流れに反する、国による「是正要求」や「指示」などの規定は設けるべきでない。また、教育委員会制度については、学校現場の実情をふまえた支援行政としての機能が発揮できる改革を推進すべきである。

以上

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談話 「教育再生会議」第2次報告について

2007年 6月 5日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆

「教育再生会議」は、6月1日、「社会総がかりで教育再生を―公教育再生に向けた更なる一歩と『教育新時代』のための基盤の再構築」と題する第2次報告(以下「報告」)を発表しました。

第1次報告の具体化という基本性格をもつこの「報告」は、以下に述べるきわめて重大な問題を持つものであり、「教育再生会議」に対し、抜本見直しのうえ撤回することを強く求めるものです。

第1の問題は、子どもたちにいっそうの学習負担を強いるものであり、子どもをさらに苦しめるものであるということです。

「報告」は、第1次報告で述べた「授業時数10%増の具体策」として、「夏休みの活用」「土曜日の授業」「朝の15分授業」「40分授業にして7時間目の実施」などをあげています。

第1次報告の際にも指摘しましたが、日本の教育制度は、きわめて競争的であり、そのもとで子どもたちは、「ストレスにさらされ、発達障害にさらされている」と、国連子どもの権利委員会から2度にわたって厳しい指摘を受け、競争的な教育制度の抜本的な転換が求められているものです。にもかかわらず、1日あたりの授業時数を増やしたり、夏休みを切り詰めたり、土曜授業を強いたりして、子どもたちに過重な学習負担を押しかぶせることは、子どものストレスをいっそう増幅させることにつながります。それは、子どもたちの学習意欲の低下、減退につながり、こうした方向で学力向上は果たせるものではありません。

子どもたちの学力向上のためには、「競争と管理」の教育政策の抜本的見直し、非系統的で子どもの発達をふまえない学習指導要領の抜本的見直しこそが必要です。

そもそも、子どもの学力が本当に低下しているのか、についても、教育学の到達点に立ったていねいな検証が求められる問題です。このことを含め、子どもの学力についての議論を、教育現場の代表や教育学研究者をぬきに行うことそのものが、きわめて乱暴で非常識な対応といわなければなりません。このようなやり方で教育がよくなるはずがありません。

また、このような重大問題を拙速に決めてはなりません。たとえば、学校5日制導入にあたっては、1992年の月1回実施にはじまり、月2回実施から完全学校5日制の実施まで、約10年かけて定着させてきたものです。仮に「土曜授業」を提案するのならば、少なくとも完全学校5日制実施にかけたと同等の時間をかけ、国民的議論の成熟を待ち、国民合意を得てすすめるのが当然です。「報告」のように、現行制度には手をつけず、今年度中の学習指導要領の改訂と教育委員会と学校に丸投げしての実施など、きわめて無責任で乱暴なやり方であり、教育という重要問題の扱いにまったくふさわしくありません。

第2に、国定の価値観を子どもたちに押しつけようとするものです。

「報告」は、「全ての子供たちに高い規範意識を身につけさせる」として、「徳育の教科化」を述べています。いま、いわゆる「靖国DVD」が大きな問題となっており、安倍政権が押しつけようとしている「愛国心」が侵略戦争賛美の「靖国史観」であることが浮き彫りにされています。「報告」がいう「徳育の教科化」は、こうした特定の価値観を子どもたちに権力的に押しつけようとするものであり、憲法第19条が保障する「思想、良心、内心の自由」に真っ向から背くものです。戦前、「修身」が筆頭教科とされ、その中で「お国のために死ね」と教えられましたが、「徳育の教科化」は、こうした戦前の教育体制への回帰につらなるものです。これは、改悪教育基本法の具体化そのものであり、国家が子どもの内心に立ち入ってはならないという近代民主主義の原則にそむくものです。断じて行ってはなりません。

子どもたちが市民道徳を身につけることは重要ですが、それは、子どもが自然や社会や人間との具体的なかかわりをとおして、自ら身につけるよう指導することが基本であり、そうしたとりくみは、今も日々の教育活動をとおして実践されていることです。

第3は、家庭教育に国が介入する危険性を持つものです。

「報告」は「親学」という言葉は、厳しい批判のもとで引っ込めましたが、「国、地方自治体は…訪問型の家庭教育支援や育児相談など、保護者を支援」として、時の政府が直接家庭教育に介入する方向を示しています。これは、改悪教育基本法が家庭教育を位置づけたことの具体化であり、国の家庭教育に対する介入の恐れを強く持つものです。

第4は、教育の条理を無視して、教育問題の現場での解決に背を向け、権力的圧力によって子どもと父母の願いを押さえ込もうとしていることです。

「報告」は「学校において、様々な問題を抱える子供への対処や保護者との意思疎通の問題が生じている場合」「教育委員会は『学校問題解決支援チーム(仮称)』を設け」るとしていますが、その構成員に、指導主事や大学教員に加えて警察官を含めています。課題を持つ子どもへの指導は、子どもの学びの場である学校で、子どもの意見をよく聞きながら、父母と教職員が力をあわせてその解決にあたることが、最も重視されなければなりません。「報告」の方向では、課題を持つ子どもの成長・発達を助けるという考え方はみじんも見て取れません。まさにこれは、子どもに対する権力的な圧力による監視を強め、取締りを強めるという考え方そのものです。第1次報告でも指摘したように、「教育再生会議」の立場は、子ども不信を根底にしたものにほかならず、到底、教育を語る資格などありません。

また、父母との意思疎通がうまくいかない場合も、父母と教職員の共同の場である学校で、父母と教職員が粘り強く話し合い、誤解があればそれを解き、父母の問題提起を受け入れなければならない場合は、教職員や学校が、率直にそれを受け入れ、教育活動に反映させることが求められます。「報告」の立場は、こうした教育的解決を否定し、警察権力をも使って父母の願いを押さえ込もうとするものであり、まったく非教育的なものです。

ここにも「教育再生会議」の人間不信があらわになっています。子ども不信、人間不信の立場に立って教育を語ることなど絶対にできません。

第5は、大学をいっそう競争の渦に巻き込もうとするものです。「報告」は、今回はじめて大学教育に言及しましたが、それは、「競争力の基盤となる数多くの優れた人材の育成」が目的であり、そのために「各大学は、競争的環境の中で切磋琢磨」することを求めています。そして、そのための財政も「競争的資金を拡充し、間接経費を充実する」「研究と教育の両面における国公私を通じた競争的資金を拡充する」としています。そのうえで、大学の「大幅な再編統合の推進」を打ち出しています。これは、大学を競争の渦に巻き込み、大学の生き残り競争を強いるものであり、大学の健全な発展をきわめて困難にするものです。その一方で、世界一高いといわれる授業料や、極端に低い大学予算の問題にはまったくふれておらず、まさに本末転倒といわなければなりません。

第6は、教職員定数増という現場の切実な要求には背を向け、教職員への管理統制強化の方向を打ち出していることです。

「報告」は、「教員の質を高める、子供と向き合う時間を大幅に増やす」と述べています。教職員が子どもと向き合う時間を増やすには、教職員の数を増やすというのは当然です。ところが「報告」は「特別免許状の活用を促進し、平成24年までに採用数の2割以上を目標とするなど、社会人、大学院修了者等を大量に教員に採用する」と述べているのです。どこをどう押せば、こうした方向が出てくるのでしょうか。教職員定数の総枠は抑えたうえで、社会人採用を増やすことが、なぜ、子どもと向き合う時間を「大幅に増やす」ことになるのでしょうか。まったく不可解です。「報告」はただ1カ所「加配」に言及していますが、それは、「副校長、主幹等の配置など、教職員の加配措置を講ずる」ということのみです。授業を持たない管理職や、授業持ち時間数の極端に少ない職を増やして、なぜ、教員が子どもと向き合う時間が増えるのでしょうか。そのうえで「教員評価を踏まえたメリハリのある給与体系にし」として、行政権力による「評価」を強め、差別的賃金を導入して、教員を時の政府のいいなりにしようとしています。こうした「報告」は、現場から厳しい批判を浴びることは火を見るよりも明らかです。

このような「報告」に対して、マスコミからも厳しい批判が寄せられています。6月2日付朝日新聞は「一から出直したら」という社説を掲げ「長い議論を経て学校が週休2日制になったのは、ほんの5年前のことだ。学力が低下したから土曜授業で補う、というのは安易すぎないか。…学力をめぐる最大の問題は、できる子とできない子の格差が広がっていることだ。授業についていけない子を、時間数を増やすだけで救えるとは思えない」と述べています。また同日付の毎日新聞は「もっと時間をかけ練り上げよう」として、「再生会議の報告でお墨付きを得たとばかり駆け出すような実施は、長く悔いを残す大失策を招きかねない」と述べています。

教育については、徹底した国民的討論とそれにもとづく国民合意が不可欠です。安倍政権の暴走に付き従ってひた走る「教育再生会議」の暴走は、子どもを犠牲にし、現場をさらに息苦しくするものにほかならず、教育困難の増大を引き起こすものといわなければなりません。こうした方向に未来はありません。

総じて「報告」は、子どもの内心の自由を侵害し、教育への国家統制を強める改悪教育基本法の具体化そのものであり、教育改悪3法案の先取りそのものです。私たちは、「教育再生会議」に対し、「報告」の撤回を強く求めます。そして、教育改悪3法案を廃案にするために全力をあげるものです。

憲法と教育の条理に立脚してこそ、教育を前進させることができます。私たちは、父母・国民のみなさんとともに、改悪教育基本法の具体化をゆるさず、子どもたちのすこやかな成長を保障する学校と教育をつくりあげるとりくみに、力をつくしてがんばる決意をあらためて表明するものです。

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